こんにちわ。脳神経内科医として病院勤務しているBrainです。
この記事では医学生・研修医、患者さんに向けた脳神経内科の魅力について解説していきます。
「脳神経内科」というとみなさんはどんなイメージですか?
難しくてよくわかんない… 治らない病気ばっかな気がする…
脳?神経?どんな病気を診てるんだろう…
脳神経内科の多様性と広範囲な対象疾患
- 対象疾患
- 治療
1.対象疾患
脳神経内科は、脳神経”内科”とあるように、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病や胸痛、腹痛といったよくある症状も診察します。
決して脳のみに特化しているわけじゃありません。
脳神経内科固有の疾患としては、脳や神経はもちろんのこと、実は筋肉の病気も我々の対象疾患です。臓器別で挙げるなら、脳、脊髄、末梢神経、筋肉です。
脳というそもそも難解な臓器に加えて、脊髄、末梢神経、筋肉が加わることで、対象疾患が膨大かつ難解となり、多くの学生や研修医が敬遠する学問となっています。教科書も他の科目と比べて格段に分厚いです…
私も学生時代は嫌いな科目でした…
2.治療
疾患により様々な治療法があります。脳梗塞であれば抗血栓療法や血管内治療、免疫が関与する疾患であればステロイドを中心とした免疫療法などです。
一昔前まではよく他科から「脳神経内科って治らないじゃん」とか、「どの病気だってどうせステロイドでしょ」などと揶揄されていました…
しかし昨今の研究成果に伴い、多種多様な治療法が編み出されており、根治困難であった疾患の治療法が続々と出てきています。とりわけ神経免疫の分野は発展が目覚ましく、分子標的薬と呼ばれる新薬の開発により多くの疾患の寛解を目指せるようになってきています。
また脳神経内科では、急性期から慢性期(リハビリテーション、在宅医療など)と多様な面から患者さんの人生を支えることができます。これは、脳神経内科の魅力の一つであり、患者さんのQOL(生活の質)の向上に直結します。
脳神経内科のキャリアパスと学問としての魅力
- 脳神経内科のキャリアパス
- 脳神経内科の学問としての魅力
脳神経内科のキャリアパス
初期研修医の2年間が終わった後に脳神経内科を選択した場合、どういったキャリアを積んでいくのか解説します。
選択①:医局に入るかフリーで行くか
これは研修医のみなさんが考える点です。私は以前まで医局に属していて現在はフリーですのでどちらのメリット・デメリットも分かります。
結論から言うと、まずは医局に入った方が以下のようにメリットが大きいように感じます。
私は病棟や外来が好きでしたが、その他にいろんな事を経験したいという思いから、医局を抜けることにしました。
非常識な形で医局を抜けるということ以外は、基本的には私のように円満に抜けられると思います。
昔のような、絶対に抜けさせてくれないなどは昨今聞いたことがありません。
最初に入局し、研鑽を積み、メリットを存分に享受してから、途中でやりたいことがあれば抜ける(もちろん抜けなくてもいいです)という方法を推奨します。
選択②専門医を取得するか
入局した人もフリーの人も必ずぶつかる選択です。
結論から言うと、取得した方がよいと思います。
新専門医制度に変わり「内科認定医」が廃止され、「内科専門医」になりました。これは、はっきり言って取得するのがめちゃくちゃ面倒です…
初期研修2年間終了後に3年ないし4年間(プログラムにより異なります)で経験した症例をJ-oslerというプログラムにひたすら報告します。症例報告だけでなく、学会発表やセミナー受講も必須です。
内科認定医はあれだけ緩かったのに…という阿鼻叫喚が遠くから聞こえてきますが、これは諦めましょう。
内科専門医取得後に神経学会が定める脳神経内科専門医の受験資格を得られるようになり、合格することでようやく一人前の脳神経内科となります。
脳神経内科専門医を取得して何か変わるかと思いますか?…残念ながら変わりません。給料などの待遇面、転職のしやすさ、さほど変わりません。
あえて変わることがあるとするならば一人前と認められることです。これは小っちゃいことのような実は大きかったりします。
あと何十年と医者人生を歩む中で、ずっと半人前とされるのはどうなんでしょうか。私はいやですね(笑)
そういった意味でもコスパは悪いかもしれませんが、取得することを推奨します。
選択③博士号を取得するか
これは専門医以上にあなた次第です。
これも取得したからと言って何か変わるわけではありません。さらに言えば博士号を持ってても最終学歴が変わる程度で、会話の中で「あなた博士号持ってるの?」と出てくることはまずないでしょう。
後述するように神経学は解明されていないことが多くまさにフロンティアです。そこであなたが何かに打ち込んで発見したいという欲求が少しでもあるのなら、取得を目指すのでよいでしょう。
脳神経内科の学問としての魅力
臨床の側面では、診断学に魅力が詰まっています。我々は患者さんの病歴や神経診察に重きを置いています。
そう、学生や研修医が嫌がる神経診察です。
病歴や神経診察にて、病変がどこにあるのかを推察します。前述の通り、対象とする臓器が幅広く、例えば「しびれ」の症状でも大脳、脊髄、末梢神経どこに障害が起きてもありえるため、病歴や神経診察で的を絞るわけです。絞った的に向けて血液検査、画像検査など行うことで診断を絞っていくのです。診断がつくことによって患者さんはある意味安心できますし、今までの報告を参照し最も見合った治療がわかり、どういった転機を辿るのか推察もできます。
全く分からない病気を自分の力で診断をつけ、治療し、患者さんがよくなっていく姿は何にも変えがたい喜びだと思います。
また、範囲が狭い学問であれば、医者も人間ですからマンネリ化してしまうということもあります。脳神経内科ではそんな心配は無用です。
以前、私の上司である定年間近の部長がこう言っておりました。
「こんな歳になっても毎月知らない病気が出てきて、学べるっていうのは脳神経内科の魅力だよね」と。
研究の側面では、脳神経内科は、未解明の部分が多く、研究への取り組みも盛んです。
不治の病とされている、多くの病気を解明するのはそこのあなたかもしれません。
まとめ
簡単にではありますが、脳神経内科の魅力について深掘りしてみました。
脳神経内科の疾患や治療は幅広く、容易には習得できないかと思います。私もまだまだ道半ばです。しかし人生をかけるだけの魅力があると思います。
進路で悩んでいる学生や研修医、また脳神経内科の受診に悩んでいる患者さんたちの助けになれば幸いです。